ログホライズンのシナリオ作成  ダンジョン物

私は年季だけは長いTRPGゲーマーですが、なんかの参考になるかもしれんので、シナリオ作成の話を書いてみます。
今回はダンジョン物です。

古くはウィザードリィ、ログホラでいえばラグランダの杜があるようにダンジョン物はシナリオバリエーションの有力な一つです。
今回はログホライズンのシステムでダンジョン物を作成してみましょう。

○○○

まずは前提条件を考えます。

面白いダンジョンシナリオとは何か?

個々の戦闘が面白い、謎かけが面白いと言うのは脇に置いておいて、ダンジョン自体の面白さとは何でしょうか?
諸説あるとは思いますが私の回答としては「ダンジョンに対する読み」だと思います。

このダンジョンはどういう意図で作成され、何が住み着いていて、何の為にそこにいるのか?
この辺を読み取れるようになると、ダンジョン探索はぐっと面白くなります。

ラグランダの杜を例に挙げてみましょう。


杜ですから神域で、宗教関係のダンジョンです。
出てくる敵がアンデット系になるのは予想できますね。
小説で面倒見の良い直継がぽろっと回答を教えてしまっているのもご愛嬌です。

また更に言えば(そして可能なら)事前にアンデットの能力を確認しておくと良いでしょう。
モンスターデータをセッション前などに見る事は人によって好みがあるので無理にお勧めしませんが、その場合でもセッションが開始されてから先輩冒険者に「アンデットって、どんな能力があって弱点は何でしょう?」と聞いておくのは良い手段です。

アンデットの能力を確認すると、例えばだいたいは「暗視」持ちである事が分かります。
小説でもセララが指摘していましたね。
敵が暗視持ちですから、ダンジョン内に明かりは無い可能性があり、場合によっては暗い事を利用したギミックが用意されている可能性が予測できます。

具体例で言えば「明かり」関係の特技があると冴えるかも知れません。 巻物で買っておくのも良いですね。

先輩冒険者が「火に弱い。打撃武器に弱い」などと教えてくれるなら、もちろん参考にしましょう。


またアドバイスの中に「実力を鍛えるためのダンジョン。自分たちの限界を見極める事」とあったらどうでしょう?

まず厳しい戦闘が予想されます。単純な力押しで突破できては訓練になりませんからね。
敵が横一列に並んで襲ってくるような物では無く、隊列を組み、地形を利用し、不意打ちや罠を仕掛けて来るかも知れません。
それに対抗するには、こちらも隊列を組み、情報収集に努め、いざと言う時は撤退できる準備が必要です。

小説で、警戒隊列、戦闘陣形などの話がでるのは、こう言った事を示しています。


上記のような事を事前に読めなかったトウヤ達新人パーティが大変な苦労をするのは、お話の都合上の理由だけでは無いのです。
戦いと言うのは、剣を抜いた時には既に勝敗の大半は決まっている、という奴ですね。

○○○
面白いダンジョンとは読めるダンジョンと定義できましたので、実際にダンジョンを作成してみましょう。

私が作成したダンジョンを公開します。要望があれば細かいシナリオも公開するので遊びたい人は読まない方が良いかな。


(一応ページ送り)


このダンジョンは「ウィザー○リィファンの冒険者達が作成した初心者訓練用ダンジョン CR2」と言う設定です。
突破する為の時間は5ラウンド。EXパワーは「ダンジョンから出て一泊したらスキルは全て全快」です。
EXパワーはラグランダの杜と一緒ですね。

シナリオ構造は、ログホライズンのシナリオの基本構造である「軽い戦闘-ミッション-ボス戦闘」を少し崩して「ミッション冒頭でのチュートリアル戦闘-ミッション本体-普通戦闘-ボス戦闘」となっています。
ダンジョンなので戦闘が多めになっている訳ですね。


さて、ではこのダンジョンを読んでみましょう。

ミッションシートおよびウィ○ードリィファン作成という言葉から、このダンジョンがウィザードリ○を模した物である事は明白です。
(明白でない人はごめんなさい)
この段階である程度の割合の人は、先の展開が読める筈です。

次に初心者訓練用と言う言葉からは、先に記したラグランダの杜と同じ傾向にある事が分かります。
隊列や撤退準備などが必要です。


更に細かく読み始めますよ。

「2.最初の小部屋:お手並み拝見」と書かれている部屋は、初心者訓練用にある「お手並み拝見」ですから、チュートリアル戦闘である事は明白です。

「練習など不要!」と言う人は無視しても構いませんが、そうでない人は一応練習しておきましょう。
ちなみに、ここでは財宝と一緒に「銅の鍵」が手に入り、先の「4.扉」が開きます。
鍵は無くても「プロップ無効」判定で突破できますが「初心者用ルートはこちらです」と表現している訳です。



扉を開けると広いエリアがありますね。全部回ると消耗して大変ですが、あちこちの財宝を放置するのはもったいないです。

ここでEXパワーを思い出した人は「初日に小部屋を回って外に帰ってスキル回復、翌日まっすぐボス戦でどうよ?」と思いつくかも知れません。クレバーですねぇ。

更に根性の悪い人は「勝ちを確信したとき そいつはすでに敗北している」という言葉を思い出したり、「ウィザードリィってダンジョン回って帰り道こそピンチになるよな」と苦労話を思い出す人もいるかも知れません。

「どうせ回復するから消耗カウンターなど幾ら貰ってもOK」な気分でダンジョンを回ったパーティには、帰り道で「消耗カウンター3つ以上持ってるPCがいると発生する、とっても強いPK盗賊パーティに不意打ちされる」イベントが発生します。

このシナリオでは処理を簡略化する為「金銭消耗表」でカツアゲ(お前ちょっと飛んでみろよ)イベントを処理していますが、実際に戦闘してみるのも面白いでしょう。

私が当初用意したイベントでは「戦闘開始前に消耗表を振る。不意打ちなのでブリーフィング無し。当然<食糧>が使えないので<疲労>して最大HPが減ったまま。敵はCR3のPK盗賊2体」という鬼仕様でした。
…良いんです。降伏したらゲットしたお宝の半分で済みますし、全滅したら復讐の楽しみが出来るので。



「4.エレベーター」と「11.魔法使いの個室」はウィザードリィファンの為のサービスで、多少の意図はありますが無理に回る必要はありません。
このダンジョンをキャンペーンにする為の伏線を引く為に使用されます。

さて、もう一つこのダンジョンには仕掛けがあります。
私の知り合いでも2人くらいしか気づかないであろう仕掛けですが「14.通路」にはゴールに繋がる隠し扉があります。

「PLが作成したダンジョンなので、ダンジョンの中の人の利便性の為に直通ルートがある事が多い」「ゴール手前に重要性の低そうな通路がわざわざL字に曲げて配置してある」みたいな微妙な要素から気が付く人も稀にいるのです。
単に「たまたまその通路を偵察してみた」で見つかる事もありますが、それもまた一興。

このギミックはゴールについた後に「反対側からはただの扉」がある事で、上記の内容をPLに伝えるようになっています。
次の冒険者はきっと上手くやるでしょう。

○○○
以上になります。細かい戦闘ギミックは省略。

部屋と部屋を適当に線で繋いだダンジョンでも、戦闘や謎かけ、GMの話術、PLのノリで面白い事は十分あります。
ですが、こんな様な事を考えながらダンジョンを作成すると、もうちょっと面白くなる可能性がある訳です。

過去のTRPGからの積み重ねを、こんな風にログホラに伝えて新しい人に広まって行くと楽しいでしょうね。