初心者向けセッションの裏側


私は完全初心者向けにセッションをする時はこんな事考えてるよ、と言う話。
初心者相手のセッションする人が何かの参考に出来る話になると良いな。


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前にもチラッと書いたけど、初心者向けセッションと一言で言ってもピンキリである。


「初心者が入ってもマスターは文句言わないよ」と言うのもあれば「ある程度ルールの説明はしますよ」とか「戦闘バランスが緩いです」程度でも、初心者向けセッションと言えなくも無い。
でも、まぁ、もう少し色々考え手も良いんじゃない?ってのが私の持論。


その私が、「TRPGって何?な奥さん」「TRPG4回目ですって奥さん」「その他ベテランの旦那達と友人」向けにセッションをしました。
その際に何を考えて、どう動いたのかを書いてみます。何かの参考になれば嬉しいのですが。


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一般的に、初心者向けセッションは簡単で典型的なパターンとして「村で依頼を受けて、洞窟かダンジョンに入って怪物倒して財宝を持ち帰る」物が良いとされます。
たしかにこれは判りやすく、また実際に使用されている事から見ても有用なのでしょう。
これの優れている所は「依頼を受けるなどの面倒なとこは省き、さっさとダンジョンに入って出来る行動が明確化され、しかも戦闘を楽しめる」点にあります。
でも、それが今回も有効か?と言われると微妙だと私は考えました。
今回の初心者にとって本当に「戦闘は楽しい」のでしょうか?


男の子の前に手頃な長さの棒が落ちていれば、だいたいはそれを拾って振り回します。
同じように長い棒を振り回している友達が隣にいれば、すぐにチャンバラごっこを始めるでしょう。
幼稚園児から30過ぎの大人まで男ならみんな同じ傾向があります。 (男っていつまでたっても子供だね(笑))
これは私の偏見ですが、男の子って基本的に少年漫画の王道的な「戦って勝つ」という展開が好きなのでしょう。


それを踏まえて考えれば上記の「さっさとダンジョンに入って、とにかく戦闘」というのは合理的です。
仲間と助け合い、知恵とダイス運を武器に強敵を打ち倒すのは楽しいものです(私も好き)
でも、女性陣にも同じレベルで期待していいのか? それもTRPG初心者に?


実は答えは今回に限り明確にNoです。 今回に限り明確なのは理由があって、それは前回失敗してるからです。


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実は初回の奥様洗脳セッションの時に、私はプレイヤーの発言数や傾向を観察してました。


初心者の女性の自発的な発言数を比較した所、どうやって脱出するかを考える時より、ダンジョンを探索している時の方が自発的発言は少なく。
「好きな方角に行って良いよ」「じゃあ、こっちで」、 「ここに行って、こう殴れば有利ですよ」「じゃあ、そうします」 の様な発言が多かったのです。
それよりは、牢屋から脱出する時のアイディア出しの時の方が積極的な発言は多かったです。


TRPGは、自分と異なるPCを演じる時に行動が難しくなります。
「牢屋に捕まって脱出方法を考える自分」と「5fステップと挟撃を駆使して、ついでに祝福の呪文の修正を貰いながら敵を殴る自分」では、初心者の女性には後者の方が共感しにくかったのでしょう。
データがたくさんあり、有利・不利が明確な行動があり、ついでに横に自分より遥かにルールに詳しい旦那がいるなら尚の事です。


問題点が明確になれば、対応は簡単。
データを知らなくても楽しめる展開で、且つデータもわかりやすくなっていれば良いだけです。


○(最善手のある)データより(最善手の無い)状況に重点を置いたシナリオ
○ボーナスの種類とか姿勢を理解しやすくする為にまとめたカード
○環境の理解を助けるマップや小物


それがこの辺になって現れるわけです。


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『(最善手のある)データより(最善手の無い)状況に重点を置いたシナリオ』


ここが判りにくそうなので、補足。
私が今回のセッションに持ち込みたかったのは「TRPGの行動は現実の延長線上にあり、決してデータを知らないと出来ない行動ではない」という事。


明らかに矢で撃たれた獣の死体が転がってた時に、偵察を出すか出さないか、などと言うのはルールとは別の問題です。
部族間抗争に口を挟むかどうかも、人質を取られている時にどう動くのかも同じ事。


この辺の行動はデータではなくプレイヤー本人が本で読んだりテレビで見たりした過去の経験から類推できる範疇です。
もちろんプレイヤーは本職の冒険者で無いので"冒険者として適切な行動"は難しいでしょう。
それに関してはマスター側から助言をしますし、データ的な質問にも答えます。


それでも最後に判断するのはプレイヤーですし、なにより状況判断には不確定要素が多いため最善手が存在しません。
言ってしまえば、最後は勘です。 現実と同じく。


その辺が、ルールを越えた所にあるTRPGの面白さの1つでしょう。


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マスタリングをする際に、一番重要な事ってなんだと思いますか?
私はプレイヤーに味方だと理解してもらう事。 つまり信頼関係だと思います。


ルールブックを読み込み公正な判定をするのも、シナリオを練りこんで説得力のある展開を用意するのも、身だしなみから言葉使い、小道具に凝るのまで含めて全て、プレイヤーと信頼関係を作る為の下準備だと言っても良いと思います。
(ま、それだけじゃないけどさ)


じゃあ、TRPGに全く縁のなかった初心者の女性相手に信頼を得るにはどうしたら良いのか。
勿論、丁寧で親切な対応をすれば良いんだけど、もう一押し何か欲しい。
んー、んー、信頼度を上げる技か。 んー、ピーン!(閃いた)  賄賂だ! (ぉぃ(笑))


という訳で、信頼度を上げる為に用意したのが「手作りレアチーズケーキ」。
これだって立派なマスタリングのテクニックなのです(笑)


こーゆう「私はあなた達と楽しいセッションをする為の熱意がありますよ」というアピールは適切であれば有効です。
一般のコンベションで「シナリオは昨日作りました。不足分はアドリブで」とか言われるとガックリくるのと同じ理屈。
それなら「一ヶ月かけてシナリオ書きました。テストプレイも実施済み。体調も万全で身だしなみもバッチリ」な方が嬉しい。


このような意気込みの1つの形として「楽しいセッションをする為に、チーズケーキ作ってきました」があるのです。
決して「とりあえず、甘いもので釣ろう」などという身も蓋も無い事を考えてない事は明言しておきます(ぉぃ


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本当はファンタジー物が初心者向けか?ってのにも疑問があります。


TRPGの遊びやすさ」は「そのプレイヤーがどの程度親しみのある世界か」によります。


指輪物語などが好きでドラクエなどを遊んでいる人にはファンタジーに親しみがあるでしょう。
野外の冒険なら、キャンプや登山の経験やTVで見た内容から実感できるかも知れません。
多くの人が学生生活を経験してますので、学園物も向いています。
ホラー映画が好きな人にはホラーセッションが、SF好きにはSFセッションが向いてます。
八百屋でダイコンを値切るTRPGなら、みんなが馴染みがあるので遊びやすいでしょう (楽しいかどうかは知らん(笑))


・・・そう考えるとD&Dは微妙に向いてなかった気がしなくも無いのですが(笑) 
今回は旦那方がD&D者が多いから総合的には向いてるので、トータルするとD&Dが向いていたのです。
そういう縛りがなかったら、多分現代物で遊んでたかな。


初心者向けの遊びやすいセッションって「どこまで世界を本人がわかりやすいレベルまで落とせるか」によるんじゃないかと思うので、現実世界と同じ舞台を持つ現代物が初心者向けなのもまた当然なのです。
(何度も言うけどゲーマー相手にファンタジー物が向いてるのもゲーマーがファンタジーに慣れ親しんでるせいね)


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一言で初心者といっても色んな人がいます。
ルーンクエスト10年しててもD&D初心者と言う人もいれば、ドラクエやりこんだ初心者もいれば、ジャンプ系バトル漫画好きな初心者もいるでしょう。
勿論、指輪物語ナルニアを見ただけで、それ以外に縁が無い人もいます。


それを考えれば、初心者対応のセッションも、プレイヤーにあわせてカスタマイズしてみてはどうでしょうか?