初心者用セッションに必要なもの。


先日、DACでD&D3eの初心者卓のマスターをしてきました。
で、このマスターをする際に「初心者用セッションって何だろう。 何が必要とされるのだろうか」という点について考える機会があったので、それについて書いてみます。 
何かの参考にどうぞ。


○○○『まず分析』○○○
ここでの初心者の定義ですが、これは『始めたばかりで右も左もわからず、誰かが正しい方向を指し示してあげるのが望ましい立場の人』とします。


では、なぜ初心者の人が対応に困り、指針を必要とするのか。
これは「マスターの頭の中にある状況が上手にPLに伝わらない」=「共通認識を作るのが上手く行かない」からです。
(これを一般に「経験が足りない」と言ったりしますね)


では、共通認識の作成に必要なセッションの要素はなんでしょうか?
ざっと一覧にまとめてみました。


・背景世界設定 (地理や歴史だけでなく、魔法の有無、冒険者の有無、文化、言語、異種族への対応など)
・PC設定    (PCがどこの誰なのか。 何処から来て何処へ行くのか。 家族や親類。性格や嗜好、得意な事と苦手など)
・システム理解 (判定方法や設定をシステムに組み込む方法(因縁とか神業とか特技とか)
・データ理解   (このシステムでは、どんな風に世界を抽象化しているか。 ぶっちゃけどのデータがどれくらい有利か、とか)
・セッションの理解 (このセッションでは何を再現し、何を楽しむのか。 PCは何が推奨され何が推奨されないのか)


最後のセッションの理解というのが分かりにくいので、もう少し補足。


セッションへの理解はというのは、いわゆる「空気読め」と言われる分野であり、微妙な差異が膨大にあり問題になりやすい分野です。「真剣勝負だから何してもいいよ」とか「悪を倒す勇者達を遊びましょう」とか「奇妙な運命に翻弄されるPCを楽しもう」とか、色々パターンはありますし、その中でも「ここまではOK」「これ以上はダメ」といった制約があります。
セッションへの理解は卓の仲間とのコミュニケーションでもあるので、一概に明文化できず、理解し辛いと言われても否定できません。


かえって分かりにくくなったか(汗  ぶっちゃけ「今日は演出戦闘無しね」とか「ロールプレイ推奨」とかそういう事ね。


○○○『そして具体例』○○○
まぁ、ともかく初心者の人と楽しく遊ぶ為には、上記の項目について、共通認識を作りやすく整えてやれば良い訳です。


で、今回のDACでやったセッションの場合の具体的な考え方。


【背景世界設定】
背景世界設定について共通認識を作りやすくする為には、PLが理解しやすい世界でセッションを行なえばOKです。
この場合、たぶんダンジョン探索が一番分かりやすいとは思うのですが、ダンジョン物だと逆に分かり易すぎて興味が惹けないかなと思ったので、田舎村を舞台にしてみました。
これであれば、詳細までの作りこみで定評のあるフェイルーンの地理や歴史を多少混ぜて話ができるからです。


【PC設定】
特殊な設定だとPLがPCを把握するのに時間がかかる為、PLの分身と言えるPCがベストです。
今回は低LvのPCを用意し、いわゆる"ただの冒険者”という設定にし、標準的な役割や戦術を書いたカンニングペーパーを用意する事で、
PLの理解を推進しました(結局、必要なかったようですが)


【システム理解】
判定方法は最初に説明すると鬱陶しいので、セッション開始直後に簡単な判定、次に少数の敵との戦闘を用意し、セッションの中で解説を行ないました。 良くある手段ですが有効なものは有効です。
その他、セッションの要所要所で「OOの技能があれば、こういう判定に使えるよ」などと小まめに提案を行ないました。
この際、提案どおりダイスを振るだけではつまらないので、明らかに引っ掛けのような提案も行い、PLがGMの提案の取捨選択を行なうように促します。


【データ理解】
D&D3.5e版では、『足払い』が非常に強力な戦闘オプションですが、判定が多少わずらわしいので避けました。
その他、特殊な環境での戦闘や、特殊な能力の敵との戦闘も楽しいのですが、今回はある程度手の内が読めるような敵を選択しています。


【セッションへの理解】
セッションを「襲撃するオーク達からの防衛」という明確な"押し”セッションとする事で、PLが何をして良いのか分からないという状況を避けます。
また、要所要所で情報を整理し、行なえる選択を明示し、予想される結果を告知しました。
これでPLの思考を「何をすれば良いのか?」から「どれを選べば良いのか?」にする事で意識のズレを防止しました。


○○○『ちょっと考えて欲しい事』○○○
ここで特に明記をしておきたいのですが、共通認識を作成する際に難易度という要素は障害になりらないと思います。


共通認識さえきちんと出来るのであれば「敵が強い」とか「ミスが許されない」という展開自体はベテラン相手のセッションと区別をする必要は無いと思います。
洞察力や判断力、決断力などPL依存の能力はシステムに依存しませんので、PLが認識違いをしないようにフォローさえしてあげれば、敵が強かろうが状況が厳しかろうが、きっちり対応できるはずです。
TRPG初心者で戦闘がさっぱりわからん、という人にも「戦闘がどういうものか」という事を認識してもらえれば平気、って事ね。
 それが無理なら、分かりやすい戦闘を用意するべきですが、それは=甘い戦闘、では無いんじゃないかと)


逆に「初心者用だから敵が弱い」というのは初心者を甘くみているんじゃないかな、と思います。
敵が弱いとスリルに欠け、スリル以外にTRPGの面白さを感じてもらう(例えば面白い判定方法への興味とか)のは、逆に初心者には難しいだろうな、とも思うしね。


○○○『よーするに』○○○
「初心者卓」と一言で言っても、そこに要求される要素は様々です。
「敵が弱いから平気」「ルール説明するからok」というのは、(私が思う)初心者卓としては「配慮が足りないかな」と思います。
理解しやすいセッションこそが、初心者向けなんじゃないでしょうか。