FF11に見るTRPGの戦闘集団


FF11というオンラインゲームがある。


FF11では敵を倒す事で経験値を得る事ができ、そして強い敵を数多く倒す事が経験値を最も多く手に入れる手段だ。
サービス開始直後は、個々に敵に挑み試行錯誤していたPL達もあっという間にチームを組むようになった。
多くの経験値を手に入れる為にPL達は工夫に工夫を重ね、瞬く間に芸術的な完成度を誇るようになった。


それは、オンラインゲームに限らず、ある戦いの極限の形だと思う。
私はTRPGで戦う為のチームを組む時、この形が参考になるなーと思っている。


●事前準備
チームを組む前から戦いは始まっている。
チームを集めるリーダーはまず戦いの舞台とする地域とそこに生息する敵を慎重に選択する。


敵の攻撃力や防御力、体力はどれくらいか。切り裂き攻撃に弱いのか、叩き攻撃に弱いのか、あるいは魔法が弱点なのか。
魔法が弱点なら、それは火に弱いのか雷に弱いのか。3種の武器属性、8種の属性を考慮する。
また、特殊攻撃も重要だ。 その特殊攻撃の範囲や威力、麻痺や呪詛などのステータス異常。
ここで判重要なのは、威力が高ければ、特殊効果が厳しければ、その敵を避ける、という訳ではない事だ。
対策が立てられリスクがメリットに見合うならば、どんなに強い特殊攻撃があってもPCは戦いを躊躇わない。


地形や敵の分布状況も重要だ。 敵がどんな条件の時に仲間を呼ぶのか、敵の増援が来にくい場所はあるのか。
その地域に行くまでのどの程度の時間と危険が存在するのか、また何より重要なのが(ライバルである)他のPCの数だ。


●チーム編成
ここまで考えた後にリーダーはチームの編成を始める。
6人というチームの大きさが最もリスクが少なくメリットが良いが、だからと言って6人いれば良いとはいえない。
PT編成は大きく分けて前衛と後衛に別れ、またその中でも細分化される。


前衛は盾役と火力担当に分かれる。
盾役は攻撃より防御力に優れ敵の攻撃を一身に受ける。火力担当は逆に防御力は捨てて攻撃力に特化する事になる。


後衛は癒し手とサポーター、そしてフィニッシャーと言った所だろうか。
癒し手は回復魔法を操る文字通り回復の要であり、サポーターは多種な魔法や歌で味方を強化し、敵を弱体化される。
そして、総合的なダメージは劣るが自在のタイミングで大ダメージを出せる攻撃魔法の使い手が止めを刺す。


これらのメンバーを敵の種類や狩場、そして仲間同士の相性などに加えて、自由になる時間や、現在のLv、そして
装備や能力によって選択していく。


チームのメンバーになる者も少しでも良くチームの貢献し、今後もチームメンバーに選ばれるように、技術を磨き、
装備を整え、力を蓄えて自己アピールを行なう。


●打ち合わせ
チームが完成すると、メンバーは目的の地域に移動しながら打ち合わせを行なう。
敵や地形に関する互いの知識を交換し、魔法の順番や優先度、技の組み立ての打ち合わせを行ない、万一の場合の
撤退手順について確認し、誰が撤退判断を行なうかまで考慮する。
全ては少しでも有利な戦いをするための工夫だ。



●戦闘開始
代表的な戦い方は敵の分断と戦力の集中だ。
チームは事前に目をつけておいた敵の目に止まらりにくい場所に拠点をおき、釣り役と呼ばれるメンバーが敵を探しにいく。
釣り役は群れていない敵を探し、他の敵に気づかれぬように敵を攻撃して自らを囮として敵をおびき寄せる。
あまり慎重すぎてはテンポが崩れるが、油断すれば敵が増援を呼びチーム崩壊の危機を招く。釣り役も熟練の技だ。


●戦闘
戦闘方法は幾つもあるので、ここだけは特定の例をあげて話をする。


おびき寄せられた敵が来るとまず暗黒騎士が敵の注意を引いて攻撃を受ける。
暗黒騎士自身は攻撃力に優れた職業だが、防御力は決して高くない。20秒もすれば死に掛ける危険な行為だ。
だが、暗黒騎士が注意を引き付けている間に敵の背後に赤魔導士と盗賊が敵の背後にまわり背後から特殊攻撃を仕掛ける。
盗賊には背後からの攻撃に限り大ダメージを与える技と、自分の攻撃を他人の物の用に見せかける技*1がある為、
敵に赤魔導師が大ダメージ攻撃を行なったと見せかけ、反撃を集中させるのだ。


赤魔導師は魔導師の中では比較的防御に優れるとはいえ、前衛よりは防御力が低い為、普通であれば盾役には向いてない。
だが、敵の攻撃を数回避ける魔法や数回受け止める魔法を駆使する事で、敵の攻撃を無効化する事ができる。
とはいえ、敵の攻撃の合間を縫って防御魔法を唱え、更には敵に弱体化の魔法、味方に強化魔法を唱えるのは至難だ。
1秒タイミングがずれるだけで強力な攻撃を受け、そのままタイミングが崩れれば瞬く間にしにかねない。


しかし、チームのメンバーは例え自分がどんなに危険になっても自分の役割を放棄する事は無い。
次の一撃が自分を殺す事が分かっていても、盾役は敵を挑発し攻撃を引き受ける。
そこには、癒し手である白魔導師が必ず役割を果し自分を生かしてくれる事を信じているからだし、詩人の歌が
自分達を支えてくれる事、自分が耐えてる間に前衛が敵の体力を削り、黒魔導師が止めを刺す事を疑わないからだ。


敵の体力の底が見えてもチームが油断する事は無い。
もっとも大ダメージを与える技、最高の攻撃魔法を準備する用意が整っていても、必ずしもそれを使うとは限らない。
何故なら戦闘は一度ではなく自分達の力は有限な為、必要以上の攻撃力はリソースの無駄遣いだからだ。
勝負に先が見えるからこそ、余力と勝利は天秤にかけ、最適な戦術判断を模索する。


●非常事態
どんなに慎重に準備をしても、ピンチが訪れる時はある。
通常時であれば、互いに相談をしながら戦い続けられるが、ピンチの時は言葉よりも早く動く必要がある。
そこにはアイコンタクトに似た信頼が作る連携がある。


戦闘中も周囲を見張っていた者が、倒しきれない増援を発見した瞬間、チームは撤退か戦闘続行かの判断を下す。
この判断の一瞬の迷いがチームを壊滅に誘うが、撤退してばかりでは時間などのリソースのロスばかりかさむのだ。


安全な場所までの逃走経路とチームがどれくらいの損害でそこにたどり着けるかを考慮し、場合によっては撤退する為の魔法を
唱えるのに必要な時間を稼ぐ為にチームのメンバーは敵の攻撃の前に身を盾にして立ちふさがる。
自分がどれほど死にそうになっても、役割を果せばチームは助かると信じるのだ。


●そして・・・。
一対一で戦っては足元にも及ばぬ敵を、役割を分担し、そして互いがその役割を必ず果すと信頼する事でチームは
飛躍的に戦闘力を増大し、倒せぬ敵を倒す。


そこには偶然の入り込む余地は極めて少なく、お話的なご都合主義も欠片も存在しない。


あるのは、試行錯誤した工夫や、慎重に慎重を重ねた準備や、ピンチに動じない精神力、そして互いへの信頼だけだ。
冒険者ではあるが英雄ではないプレイヤーキャラクター達は、積み上げた努力だけで奇跡に等しい行為を可能とする。
それは、戦う為のチームの究極の形の一つだと思う。



●TRPGへ
TRPGで戦闘が予想され、その為にチームを組むのであれば、私は可能な範囲で理想を追求したいと思う。。


敵の知り、地形を調べ、自分達の能力の限界と応用力の範囲を何度も見直して有効な手を考える。
最も敵の戦闘力が発揮できない環境を用意し、自分達の能力の発揮できる環境を創りだす。
眼前の戦闘だけでなくその後の展開も考慮し、大局的にチームのリソースを分配する。
個人個人の役割について正確に理解し、ピンチの時こそ互いの信頼関係を支えに踏みとどまる。
リスクとメリットを天秤にかけ、機を見て乾坤一擲の勝負に出る。


この方針は、ゲームとして遊ぶなら推奨されて良い事だと思うし、PCが戦闘集団であるならロールプレイとしても
これを追求する事はなんら問題を持たない、とは思うんだけど、これも和マンチと言われたりする危険はあるんだよね。
(和マンチの定義があいまいなのも原因のひとつではあると思うのだけど)


全身全霊をかけて強敵を倒すor敵わず撤退するのって、楽しいと思うんだけど、そう思わない人も多いんだろな。
(上のが負けて死亡でなく撤退なのは、私はPCが死ぬのは好きじゃない為。その分、撤退の手段やタイミングには気を使う)


でも、仲間と知恵を絞って困難に挑むというパーティープレイの楽しみは、捨てるには惜しいと思うよ。

*1:<はったり>って戦闘中にはあまり使わない技能だけど<はったり>を使って防御能力の高い味方を攻撃させるってのはTRPGに応用しても面白いアイディアかも知れない。D&D3eには<挑発>があるけど