プラネットナイツに見るTRPGシステムの進歩

『プラネットナイツ』は"RPG福袋93"という名前で発売されたシステムの一つで、簡単にいって聖闘士星矢を遊ぶシステム。
なんだけど1993年のシステムだけあって古かったりするので、それを振り返りつつシステムの持つ意味とか、TRPGのこれからについて適当に馬鹿話をしてみようかと思う。
(前回までの話はこれの伏線だった、とも言える。実際に遊んだ内容を書かないと説得力無いだろうからさ)



プラネットナイツのルールは、ざっくり言って「能力値」「普通の戦闘ルール」「必殺技戦闘ルール」しかない。
この中で聖闘士星矢を再現するのに役立ちそうなルールはこれ。
・美形度:能力値のひとつ。これが高い人ほど戦闘の優先権がある。
・必殺技:直撃すると相手のHPは問答無用で0になる。
・13話完結:1セッションで13話を遊ぶ。簡単に言うとシーン制。


古いシステムのせいもあって、大変大雑把です(笑)
(それを言ったらクラシックなD&DやT&TやSWやMERPも大雑把だったけど)

とはいえ「遊べないのか?」と言われるとそんな事も無く、ある程度の失敗確率を受け入れ、GMやPLの腕が良ければ普通に遊べます。
遊べますが、でもそれは「一流のバイオリニストなら安い楽器でもそれなりに素晴らしい演奏ができる」と言ってるのと変わらない。
TRPGだって1993年から今までの間で、技術革新が進んでますから、それを利用しない手はありません。
いっそ「プラネットナイツTRPG 3.5e(仮称)」を作ってしまえば良いのですよ。


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プラネットナイツ3.5e(仮称)に何が必要かと言うと、聖闘士星矢をどう再現したいのかによります。
とりあえず「掛け算」は専門ではないので今回は諦め、ジャンプ的に「努力、友情、勝利」を目指してみます。



星矢が頑張る為には「頑張る理由」が必要です。つまり設定ですね。
元々のシステムには設定を補強するルールが何もなく、これをPLとGMのセンスと経験で補ってきました。


これに対して近年(2000年以降とか)のシステムが導入したのが「過去チャート」系です。
アリアンロッドやカオスフレア、N◎VAとかの因縁とかタロットとかね。
(実際は設定チャート何て昔からあったけど(N◎VAも93年発売だ)、少なくともプラネットナイツには無い)


「設定は重要。でもルールでフォローしないので頑張れ!」という時代から「設定を考える為に参考になる表を用意したぜ!」という変化です。
ついでに「設定にあった名前をつけるとボーナスがつく」という真名のルール(from異能使い)なんてのもの、この一環かな。



ついで「友情」をする為のシステムについては、PC間の感情を事前に設定しておく「人間関係チャート」が導入されるようになりました。
(PC1とPC2は兄弟で庇護しようと考えてる、PC2はPC3を尊敬してるとか)
これも「友情は重要。でも人間関係はPLやGMが0から設定してね」から「最初の人間関係設定は手伝うよ。これを発展させてって」になったと言う訳。



最後に「勝利」 この場合の勝利とは聖闘士星矢的勝利です。
聖闘士星矢を遊ぶ以上、最終戦闘での勝利はかなり高い確率で保証されているのが望ましい。
「一二宮に突入して二つ目で敗退して翌日出直し」では星矢的には盛り上がらない。


すると「データ的なスリル」以外の点で楽しみを探す事が必要になる訳で、今回私の方で用意したのは「ストーリー的に盛り上がれるかというスリル」。
要するに「勝つ為には、燃える展開を用意できねばならない。盛り上がらないなら負けて良いよ」と言う事。


これをシステムに落とすとフレア(fromカオスフレア)とかカラミティルージュ(fromテラガン)などの「ロールプレイの評価を判定に盛り込むルール」になる。
クラシックD&Dなら「感動的なロールプレイだった。DM裁量で1点修正やろう」とか「それはそれとしてダイス振れ」と言っていたのが、きちんと「勝つ為に盛り上がって、ルールに沿って修正もらってね」になったと言う事だね。


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こうやって修正を色々入れた場合に特筆すべきなのは『プラネットナイツよりプラネットナイツ3.5e(仮称)の方が、誰が遊んでも聖闘士星矢になりやすいんじゃねーの?』って点。
これはTRPGのシステム的な進歩の方向性の一つだと思うんだけど、どうかな?


PLやGMのセンスや経験則といった職人芸的技術が、システムに取り込まれて精査され汎用的技術として運用されるようになったとも言える。
これは別に「昔の遊び方が歪んだ」とか「昔と違う」という話では無く「現代のシステムは昔の遊び方を口伝では無く技術として今に蘇らした」という事だね。


よく「ハンドアウト不要論」とかをグタグタ話してる時に「FEARがハンドアウト広めたんじゃん」「いや、ハンドアウトなんてクトゥルフの頃からあるよ」とか言ってますが、あれってつまり「昔からある職人芸的技術を汎用的技術として一般化した」って事。


んで、現代の腕の良い職人は、その汎用的技術を踏み台にして、更に一歩先に進んでいけば良い。
TRPGの進歩の形としては、わりあい有りなんじゃないかなーと思うのですよ、私は。