馬鹿話:ドラクエ攻略

「金貨30枚と銅の剣1本渡されて世界を救え、と言われたらどうするよ?」


今日はそんな話。


○○○

私「そうだなぁ。まず資金を稼いでから街を拡張する」
友人「街の拡張?」


ドラクエの街は基本的にモンスターに襲われない。
辺境の村であろうが周囲に凄い敵が居ようが村や街の中は安全だ。
これは、おそらくモンスターの進入を拒む結界の類する物が存在すると予想される。
これを利用して街の一部を細く長く拡張し、近くの街に届くまで伸ばす。


友人「それって、街道じゃないの?
私「街道なんか役に立つか! 街なのが重要なのだ!」


モンスターは街道は襲うが街は襲えない。
安全な商業用交通エリア(通称:道)が確立すれば相互の中心エリア(通称:街)を軸とした商業は発達し、豊富な資金が生まれれば投資先が望まれるはずだ。
それを利用して、更に街の一部分を伸ばして他の都市と接続し、全世界を蜘蛛の巣の様な交通網で結ぶ。


友人「なんか、ドラクエというよりシムシティのような」
私「五月蝿い。黙れ。 キミは適当に伝説に従って勇者様してろ!


交通網が整備され資金が集まったら再開発だ。
資金が揃い次第、個々の道を広く太く拡張していく。
網の目のようだった道はいずれ世界の大部分を覆うようになるだろう。
街に入れないモンスター達は。未開発な辺境へと追いやられる。
これでとりあえず世界の半分は救えるはずだ。


友人「なんか、そこまで行くと地上げ屋なような」
私「五月蝿い。黙れ。 キミはさっさとフラグ回収しつつレベル上げてろ!」


そこまで来たら第二段階。
「勇者支援組合」との接触を試みる時間だ。


友人「なにそれ?」
私「ドラクエ世界の根幹をなす秘密組織で、主な業務は運輸と牧畜だ」
友人「はぁ?」


○○○


そもそも世界を救うのに「銅の剣と金貨30枚を小僧に渡すだけ」が変だ。
国の財政破綻の様子も無い以上、これは予算枠限界の可能性がある。
おそらくロトの血を引く勇者など星の数ほどいるのだろう。
割り当て資金が有限な以上、個々の金額が下がるのは仕方が無い。
ここまでは誰でも思いつく常識的な判断だ。


次に考えなくてはならないのは、輸送技術の秘密だ。
特に最後の村などで顕著だが、めちゃめちゃに強い敵に囲まれた村の人々ですら衣食住に困っている様子は無い。
友人「や、そこはゲームだし」
私「(デコピン)『ゲームだから』なんて答えは無い。答えはルーラだ!」


ルーラは移動の為の魔法であり、これなら街や村への移動など容易い。
辺境の村はルーラによる魔法交通網で都市部と交流があると考えられる。


友人「ルーラを使える村人がたくさんいるの?」
私「(黙ってパンチ)その話はあとだ。次はスライムの分布に対する考察だ」


○○○

そもそもスライムの分布は大変奇妙だ。
始まりの城や街の周りには無数にいる癖に最終エリアではほぼ見ない。
スライムの弱さや能力からみて種族維持を数に依存するタイプと考えられるが、それは最終エリアに存在しない理由にはならない。


むしろ、スライム以外の他のモンスターも人里から遠ざかるに従って段階的に強くなるのには人為的な作為を感じる。
あまりにもレベル上げを行なうのに都合が良すぎるのだ。
魔王達が緩慢な自殺のために勇者を鍛えているという可能性もあるが、ここはもっと素直に「勇者支援組合」の存在を疑うべきだろう。


友人「(鼻血を抑えつつ)ようやく本題だね」
私「(ハンカチを渡す)うむ。本番だ」


○○○

・無数の"ロトの血を引く勇者"な先達は何処に行ったのか?
・村や街を結ぶ無数のルーラ使いはどこから来たのか?
・モンスター配置のコントロールは誰がしているのか?


この答えが「勇者支援組合」(仮名)だ。
"ロト血を引く勇者”として戦った男やその仲間の中に、先見の明に優れた知者が存在し、自分では魔王を倒せないと悟った元勇者達を束ねて「勇者支援組合」を組織したと予想できる。


彼らは、世界各地の村や街をルーラで結びながら、エリアに見合わない極端な強さのモンスターを間引き、必要ならスライムの養殖などを行う事によって、最低限度の世界の維持を行ないつつも、やがて現れる後輩のために環境を整備しているのだ。


友人「(ハンカチで目頭を押さえ)泣かせる話だね」
私「(同じくハンカチだし)うむ。これこそ先輩の愛だな」


サマルトリアの王子をどんなにどんなにどんなに鍛えても、あっさりとローレシアの王子の物理攻撃力がそれを追い抜くように、元勇者達は自分の素質の限界に気づいたのだろう。
恐らく、ハーゴンがフィールドマップを歩いていれば組合員でリンチにして勝てるだろうが、相手はダンジョンの奥、1パーティで3人から4人しか入れない為、刃が立たないのだ。
その無念を胸に秘め、縁の下の力持ちとして世界を守り後輩の育成に励む姿に涙を禁じえない。


彼らの本拠地はおそらく最後の村だろう。
もっとも危険な村にこそ元勇者達がひっそり住むのに相応しい。
(万一村にモンスターが入った場合の、保険にもなるし)


友人「それで「勇者支援組合」に会ってどうするの?」
私「うむ、教師役を頼む」
友人「教師?」


○○○

世界の半分を街にする事で生産の向上や人口の増加を望めるとはいえ、海や山を街にする事が可能かどうかは判らない。
世界中が街になって自然界のバランスを壊しても困るし。
モンスターが街に襲撃してくる過去の事例もあり、対抗武力は必要だ。


友人「軍隊でも作るの?」
私「軍隊など役に立たん。 必要なのは勇者だ!」


ドラクエ世界の軍隊は弱い。「ぐふっ」と言って一瞬で全滅する。 それよりも勇者一行のほうが遥かに強い。
1万の軍勢より100人の勇者こそが、このドラクエ世界の真実だ。


そこで、高級防具と消耗品を山と持たせた勇者志願者のグループ1つ1つに「勇者支援組合」の組合員を1人づつ付け、組合員が戦う姿を間近で見る事で早期能力アップを図る。
見ているだけでみるみる内に経験値が入ってベテランになるぞ。


友人「それって、MMOで嫌われるパワーレベリング・・・」
私「違う!(ドロップキック) これはオンザジョブトレーニンだ!」


あとは、促成栽培、もとい、見違えるような速度で成長したプチ勇者達の力を結集してモンスターを殲滅するだけだ。
ま、完全に絶滅させる必要は無い。軍需産業が急に廃れては経済的要求から不要な内戦が勃発する可能性もあるのでほどほどで十分だ。


私「その後、プチ勇者達の集団の力を持って世界を取り戻す」
友人「そして、勇者である僕の出番は無し、と」
私「いや、そんなことは無いぞ」


○○○

プチ勇者隊と「勇者支援組合」、そして資金力による物量作戦でもダンジョンには人数制限がある。


とりあえず、竜王城やバラモス城の目前に街をつくってアタックを支援する事は出来るが、最後は勇者の出番だろう。
なにより、神々や伝説や妖精達が力を貸してくれたりしていた場合、それをありがたく使わせてもらわないと角が立つ。
神仏に頼る必要は無いが敬意を持って必要な分だけ力を借りるべきだ。


友人「意外にロマンあるのね」
私「可能な範囲内ギリギリでロマンを追求するのも現実主義の形なのだ」


結果、魔王だか竜王は倒れ、世界中に交通網と教育システムが整備され、世界に剣と魔法と資本主義の文化が発達するだろう。
軍ではなく勇者隊である為、退役軍人の数は最低限に押さえられる為社会に対する影響も少なく、ダンジョンなどは手付かずに近いから残った勇者達の業務先も保証される。
また、紛れも無く世界を救った勇者が存在するので、彼を盟主に祭り上げれば300年くらいは平和な時間を保つかもしれん。


友人「で、僕の勇者が王様になる、と。 キミはどーするの?」
私「勿論、別の世界で次のゲームを始めるのだ。    ウィザードリィを制圧するのに必要なのは・・・」

おあとがよろしいようで。

※ 意外と笑った人がいたのでこっちでも公開。