Aの魔法陣とはなにか?


Aの魔法陣」がめでたく発売されました。
いつもお世話になっているGM日記さん経由で色々な方の"Aの魔法陣像"を拝見して、
大変面白かったので、私も少し解説に挑んでみます。


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Aの魔法陣とはなにか?


簡単に言えば汎用TRPGシステムのひとつです。
もう少し詳しく言うなら、ルールブックのゲームデザイナーの回答を読むのがオススメでしょう。
そして、もっとも優れている方法は腕のいいSDと一緒に遊んでみる事です。


「理解する最善は腕のいいSDと一緒に遊んでみる事」
なんかに似てると思いませんか?
私はこれを”TRPGに始めて出会った時に似ているな"と思いました。


TRPGってドラクエと何が違うの?」という質問に対する回答が、「そもそもTRPGは役割分担と意思決定の・・・」と回答しだすと、とたんに訳が判らなくなるようになり、「とりあえず、やってみようぜ」と言うのが最善なのと似ています。


なんで、一回遊んでみましょう。 説明終わり。


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・・・というのも何なんで、もう少し回答を頑張ってみます。
私の用意する回答は二つ。
(ちなみに、ゲームマスター(GM)の事をAの魔法陣ではSDと呼びます)


1.TRPGにあまり詳しく無い人向け。


「ルールが少ないTRPG」「面白さ保証つき。ただし私がSDする場合に限る」
以上。


解説
Aの魔法陣は他のTRPGに比べてルールもデータも少ないので、代わりにSDの腕によってセッションが左右されます。
だいたいの人は、2,3度試行錯誤すれば楽しめる程度の物ではありますが、それでも腕が悪い人がSDだと事故る場合があります。
どんなTRPGだって腕が悪ければ事故るのは同じですけどね。 比較すると誤解されやすいシステムなのでちょっと不利。


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2.TRPGに詳しい人向け。
所感を語っても説得力に欠けるので、卑怯技を使用します。


"私がゲームデザイナーに(一応)OKを貰った回答"を題材にしてみます。
これなら、公式見解とは言えませんが、多少は的を射ていると言えるのではないかと。


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>SD−DOJO 回答より。
>Aの魔法陣を、他ゲームと比較し、目立った特長を挙げなさい。


他のゲームは数字で共通認識を語るが、Aマホは言葉で共通認識を語っている。


数学的解釈(例:2は1の二倍大きい)は人が認識を共通化しようとする際に分かりやすいツールである。
それを利用して他のゲームは共通認識を数学的データに変換し、判定への修正値などという形で世界を語っている。
しかし、数学的解釈には単位基準を設定する必要があるが、実際の世界には無数の単位基準が存在する。
(何かを殴った時の痛みに関する基準、艦砲射撃を行なった時の基準、子供に話しかける時の基準、誰かに対する友情や愛情の基準)
他のゲームでは取り扱う分野を狭めて、その範囲の単位基準を設定する事で数学的に共通認識を語っている。


Aマホは共通認識を言葉の意味というツールを使って語っている。
この手法は数学的解釈では無い為、単位基準をデータとして設定しておく必要が無い。単位基準は言葉を使用する度に設定される。
つまり、理論上は無限の分野を取り扱う事が出来る。


これらの手法はGMとSDの立ち位置の違いとしても現れる。 
他のゲームでは共通認識はデータとルールという形で数学的解釈によって形成されており、GMが誰であるかに関わらず固定されている。
勿論、実際に遊ぶ際には個々のGMによるアレンジはされるが、基本的にはGMのアレンジを必要とする部分を減らす事で、
負荷を軽減しようとデザインされている。 ここではGMはルールで出来ない範囲をカバーするアレンジ用のマシンである。


振りかえって、Aマホでは共通認識は言葉によって表現され、SDを基準とした共通認識がゲームの基本となる。。
SDが異なれば共通認識に基づく世界は大きく変わり、極端な話、世界は他のSDとの互換性は無い。
ルールはSDがアレンジする事をフォローするように動き、ルールの中心にはSDが存在する事になる。


これらの点は、ゲームして何を遊ぶか、という点にも反映される。
他のゲームではルールやデータを基準となる共通認識として、その上でゲームを楽しんでいる。
Aマホでは、言葉をツールとして扱い、共通認識を作る事自体をゲームとして楽しむ事が出来る。


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これはゲームデザイナーに直接Aの魔法陣とは何か、という質疑応答をした時の回答の一部です。
本当はもっと他の人のわかりやすい回答(しかもゲームデザイナーのお墨付き有り)もあるのですが、他人の文章を勝手に
引用するわけにもいかないので、自分の回答を引っ張ってきてみました。
当時公開されていた他の人と違う切り口を目指して回答したので、あまり良い回答でもないのですが。


さて、上記の回答にあるように「Aの魔法陣」と「他のTRPGシステム」の最大の違いのひとつを、私は「数学的解釈の見直し」としています。
これは「データによる世界設定、判定基準の否定」であり「セッションの画一性の否定」です。
平たく言うと「同じ”Aの魔法陣”でもSDによって全然違うセッションになる」という事。
別の言葉で言うなら「SDを信用しないとマトモに遊べない」という事ですもありますね。


「他のTRPGシステム」で、データがきっちり書かれているのも、判定方法が明確なのも「ルールブックに書かれている通りにしてる間はGMを信用して良し」と言っているのです。
(例えば、人の話し声が木製の扉越しに聞き取る難易度がルールブックに明示しれあれば、それに従うGMの判断が正しい事がわかります)
ところが、Aの魔法陣には「SDが信頼される為の仕掛け」がありません。厳密には、従来と同じ仕掛けはありません、が正解かな。
(例えば「木製の扉越しに音を聞くのは結構難しいよ。難易度3くらい」と言うSDの判断は、信用するしかありません)
SDによって判定基準も難易度も千差万別になりますし、それは回避不可能です。
これが「安定性の低さ」と言えるでしょう。 「遊べない」「人を選ぶ」と言われる所以です。


でも、SDの判断ってそんなに信用できないですかね? ”常識的”なSDなら大体信用できるでしょう?
『もしSDの"常識"を信用できるならTRPGはルールもデータもずっと少なくて良いし、カバーできる事象や規模も自由になる』
・・・って、いうのがAマホの根幹だと私は思っています。
(SDが信用できない時どうするかって? 話し合うんですよ。それが共通認識でしょう)


私はAの魔法陣がベストなTRPGだとは思いません。
最大の問題点は「SDが知らない(説得力を持たせられない)世界観で遊べない」点です。 
SDが「サイバーパンク」を見てなければ、Aの魔法陣で「サイバーパンク」を遊ぶ事は出来ません。
SDが「ホラー映画」に興味がなければ、Aの魔法陣で「ホラー映画」を遊ぶ事は出来ません。
でも「ガンドック」なら、GMがミリタリー知識がなくてもデータを見て判定方法に従えばミリタリーTRPGを遊べます。
それが「他のTRPG」が「Aの魔法陣」より優れている点です。
(ちなみに「ガンドック」のデータや判定方法をSDが理解すればAの魔法陣でもミリタリーを遊べますが、それは別の話)


Aの魔法陣の特徴、少しは理解してもらえたでしょうか?