初心者に適切な対応ってなんだろね


さて、前回のレポはバカ話満載でしたが、今回はマジメな話。


初心者向けセッション、厳密には「完全にTRPG初心者」&「今回のシステムには疎いけどTRPGをしてる人」&「熟練者」が参加者の場合の、マスター側の工夫や、プレイヤー側の工夫の話。
こんな工夫が良かったとか、今後こうしてみようとかの話です。


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>事前顔合わせ&打ち合せ

特定のシチュエーションに限らずセッションをする場合には、事前にクラス選択などの打ち合せや簡単な自己紹介をweb上や、別の機会に直接あって済ませておいた方が良いのは間違いないようです。
これのおかげもあって、今回はセッション開始までの流れは大変スムーズでした。


当たり前だけど「まったく知らない人」と長時間遊ぶのに躊躇いを持つ人がいるのは当然だしね。
可能なら、希望するセッションの方向性や難易度(ガチ度)も聞いておくのが望ましい。
PLとGM間の信頼関係の基本は相手を知る事だから、当然といえば当然か。



>クラス選択
今回「完全にTRPG初心者」&「今回のシステムには疎いけどTRPGをしてる人」は、クレリック&バードを使用していたのだけど、それほど取り扱いに困っていたようには見えなかった。
(勿論、魔法選択とかには悩んでたけど、それは熟練者でも悩む所だから特記しない)


よく「初心者は戦士で」と言われるけど、その正当性にはやっぱり色々疑問がある。
まず「本当に戦士が簡単か?」と言われると疑問。 特にシミュレーション色の濃いシステム(今回はD&Dが該当する)なんかでは、移動方法や機会攻撃など考える事は結構たくさんあるし、一概に簡単とは言えない。


「戦士が楽しいか?」と言うのもどーだろう。 確かに私も実際に前で攻撃する役は楽しい。 楽しいけど、それが全ての初心者に共通するかというのは、やっぱり疑問だ。


むしろルールが多くて面倒な戦闘よりも、別のシーンで動きやすいキャラの方が楽しいかも知れない。
主人公系を初心者に勧める人がいるのも、ルールの分かりやすさより(どうせどれも難しい)、動機や立ち位置の明確さを考えてかも知れない。
(今回のセッションで言えば、善のクレリックというのは素性がはっきりしてるし、行動指針も明確なので動きやすいと言えるかな)


そういう意味では「何が簡単か」「何が楽しいか」なんて、例え熟練者であっても外野が決める事はかなり難しい。
だったらPL本人の希望を酌んで「動物使いがしたい」ならドルイドを、「魔法使いがしたい」ならウィザードを勧めちゃっても良いのではないかな。
「何が簡単か」「何が楽しいか」は判らなくても「本人が遊んでみたいクラス」ならわかる訳だしさ。


ちなみに「本人が遊んでみたいクラス」が戦闘系でも「戦闘系クラスで遊んでみたい」であって「本人が戦闘好き」と言い切れない所も難しい所。
TRPGを遊んだ事が無い人がTRPGの戦闘の楽しさを知っていると考えるより「簡単そう」「勧められたから」「戦士のイメージが好き」である可能性の方が高いだろう。



>セッションの傾向
今回のセッションはバリバリにシティアドベンチャー(街を舞台とした冒険)だったのだけど、取り立てて実害があったようには見えない。
「シティアドベンチャーは初心者には難しい」と言う話も聞くけど、これも眉唾かも知れない。
筋立が明確で情報量が過多でなければ(一本道シナリオとも言うが)良く知らない敵と良く知らないルールで戦闘するより判りやすい。
結局、PLがどれくらい慣れ親しんだ世界か?という点がポイントなので、シティアドベンチャーも悪くなさそうだ。


>戦闘
やっぱり戦闘は難しい。 参加した人にも聞いてみたけど「セッションは楽しいけど戦闘は何をしてるか判らない」と言ってたし。
偏見バリバリだけど、やっぱり私には「みんなが戦闘好き」とはどうしても思えない。


「完全にTRPG初心者」&「熟練者」みたいな場合には、どうしても初心者の人は熟練者の操り人形になると思う。
この例えは良くないかな。 将棋を指してる時に後ろから玄人に口を出されている状態?


初心者の人は、当然どうしたら良いのか分からないから「どうすれば良いんですか?」と聞くし、
聞かれたら熟練者は「ここで、こうしてこうするのが一番良いと思う」と親切に答えるだろう。


この熟練者の提案が適切であればあるほど、熟練者が親切であればあるほど、逆に悪い影響を与える。
自分から質問する必要すらなく黙って指示に従っているのが最善だったとして、それの何が楽しいのだろう?
(指示に従って役に立つと相手が喜ぶので、その姿をみて自分も嬉しい、というのはあるが、TRPGの楽しみはそれでいいのか?)


※ちなみに、この話って「完全にTRPG初心者」&「熟練者という場合固有の問題。
※全員が「初心者」で熟練者がいない場合は、この問題は発生しない。
※みんな同列で「良くわからないけどやってみよう」という状態であれば「正しさを武器に他人を指示する」事は不可能だから。
※皆で試行錯誤して失敗や成功を繰り返すのは楽しい。


>良い先輩プレイヤー
同じ卓を囲むプレイヤーとして「熟練者」側にも配慮がいるよな、と思う。
上にも書いたけど、いつでも正解を示唆すればそれが最善の対応と言う訳ではない。それは過保護と言う物だ。


・・・といっても、これは難しい。
細かく説明すれば「初心者」の人の処理能力を超えるし、大雑把な説明では判断できない。
嘘を教える訳には行かないし、失敗すると申し訳ない気持ちになるから、常に自分のできる最善を尽して助言したい。
なのに「それが良くない」と言われても途方にくれるよね。
学校の教師達が「指導方法」に悩む気持ちがちょっとわかる気がしなくもない。


じゃあ、どうするのが良いのか。
とりあえず、私の今の考えとしては「相手が楽しめる要素を探す」しかないかなぁと思う。
セッションの中で面白い要素があれば次回に繋がるし、回数を重ねれば自然と他のルール(主に戦闘ルールか)も覚えてくる。
その内、興味を持って自分でルールブックを読んでくれれば言う事は無い。


それ以外のややこしい事(ここでは戦闘など)については、実際に戦闘や行動宣言をやってみせて、何故その行動をしたのかと説明した後は、気持ちをぐっと押さえて他の人の行動に口出しを控えるべきだと思う。
その結果、失敗したり、あるいは上手にこなしたりしたら、それについて説明したり、褒めたりする。


「初心者」の行動でピンチになったら? そんな時こそ「熟練者」の腕の見せ所だろう。
そうやって、「初心者」の人の行動結果を上手にフォローできるのが「熟練者」の余裕と言う物ではなかろうか。
試行錯誤の中にこそ、「自分が選んだ行動である」という実感が生まれ、手ごたえとなって楽しみを提供するのだと思う。


今回は「熟練者」の人が「揮発性の記憶力を持つ兄」をする事で「初心者」の人が「兄の世話を焼く妹」というポジションを取れるようにしてたのが印象的だった。
こういう立ち位置をする事でロールとゲームで互いを補完する対等な関係で遊べるようにする技術だと思う。
(ダブルクロスのロイスとかは、これをシステムに組み込んでいる。さすがに洗練されてるね)


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こうやって文章にまとめて見ると別に取り立てて珍しい意見じゃなく、これまでも感覚的にしてきた事だな、と思う。
ただ、同時に偏見を持ってた部分がなくも無い。 批判的精神や自覚的理解が足りなかったかも知れないな。


今回の経験で「もっと考えて遊ぶようにしよう」と想いを新たにできたのは収穫だった。参加させてくれたDMさんには感謝。



ついでに蛇足。
念のために断っておきますが「熟練者はこうあるべきだ」とか「TRPGはこうあるべきだ」と述べている訳ではありません。
プレイヤーとしてもマスターとしてもTRPGを楽しく遊ぶのは簡単だし、こんな配慮が必須な訳でも的を射てると限った訳でもありません。


ただ、もっと上手に楽しく人に優しく遊ぶ為には、どうしたら良いかな、と私個人が試行錯誤をしているだけです。
それが、もし誰かの参考になるなら、それはとても嬉しいと思いますが。