TRPGの本質とAの魔法陣

Aの魔法陣とは何か、という問いかけに私は「良く出来たTRPGのシステムだよ」と答える。
今日はその話。


Aの魔法陣はTRPGシステムか?】

TRPGは、GMが頭に思い描いた状況を、世界設定、PC設定、モンスターデータや各種ルールを土台に
PLが質問をして理解し、これに対してPLが適切だと考える行動を宣言する事を繰り返す遊びとも言える。


GM:「部屋の大きさは30f四方。中にはゴブリンが3匹いて、君達に襲ってきた」
PL:「全部装備は一緒?」
GM:「右端のゴブは杖を持ってるね」
PL:「じゃあ、杖を持ってるゴブに切りかかるね」


上記の場合、GMの頭の中にはゴブリンと呼ばれる人間型の子鬼(一匹は魔法使いで、残りは戦士)が部屋の中で待ち構えておりPCに襲い掛かろうとする状況を思い浮かべており、PLはゴブリンについての基礎情報などは世界設定に準じた上で、追加の情報を求めて質問を行い、その結果を元に状況判断を修正してGMと状況を共有し、次に、自分で考える最適の行動を宣言している。


GMの頭の中の状況をPLと共有する事を『共通認識の作成』とし、PLの行動を『行動宣言』という言葉で表すならAの魔法陣は、ただひたすら『共通認識』と『行動宣言』を繰り返すシステムである。
(これの真偽については、サポートページなどを参照して下さい)

もっとずばり言うと「TRPGが本質的に『共通認識の作成』と『行動宣言』を繰り返す遊びである」という定義が真なら、「Aの魔法陣はTRPGの本質を遊ぶシステムである」と言える。つまり「良く出来たTRPGのシステム」だ。


まとめ
前提1:「Aの魔法陣は共通認識』と『行動宣言』を繰り返すシステムである」
前提2:「TRPGが本質的に『共通認識の作成』と『行動宣言』を繰り返す遊びである」
結論 :「Aの魔法陣はTRPGの本質を遊ぶシステムである」


Aの魔法陣の特徴】

上記の説明は「Aの魔法陣はTRPGの本質を遊ぶシステムである」という話であって、言い換えれば「Aの魔法陣は普通のTRPGだよ」と言ってるだけだ。


そもそもAの魔法陣は、滅多に売ってない(失礼)アルファシステムサーガの巻末のおまけシステム(度々失礼)と思われているし、雑誌で連載を持ってる訳でもなく、リプレイが発売されている訳でもなく、それどころか、リプレイをWeb上で読む事も殆ど出来ないような、マイナーなシステムである。
(一応私が遊んだ時のリプレイがあるので、興味のある方はこちらをどうぞ)
これでは、馬鹿にされ、鼻で笑われても仕方が無いシステムではあるけど、実に面白い特徴がある。



Aの魔法陣は、膨大な世界設定やPCの個々の行動に対する判定方法や修正値などを二次的な物としてばっさり切り捨ててる。
Aの魔法陣は、非データ可動型のTRPGのシステムなのだ。


例えば、D&D3eで戦闘に勝とうと考えた場合、状況を把握する洞察力、攻撃か撤退を決める決断力などに加えて、PC達の持つ特技や魔法、戦闘で使う移動方法についての判定や、行動解決の手順などシステムやデータに属する知識や理解も重要な要素である。


ところが、Aの魔法陣ではシステムやデータに関する知識や理解が占める重要度は格段に低い。
持っている足払いという特技がどんな物かという理解は重要だが、その足払いの判定方法を覚えている必要は無い。
PLはデータやルールの知識面に対する負荷が軽減され、逆に洞察力や決断力、発想力といった面を要求される事になる。


・・・断っておくが、これは別にAの魔法陣D&D3eに勝っているという主旨の話ではない。
D&D3eはシミュレーション的な意味のゲーム面で優れており、Aの魔法陣はデータ以外の面が得意だ、という話だ。
これはコンサートとカラオケくらい違う話なので、同列で優劣を競っても意味がない話でもある。


閑話休題
Aの魔法陣は、良く出来たTRPGのシステムであり、またデータの比重の低いシステムである。
と言う事は、当然「TRPGの本質の中の、データ以外の部分に重点を置いたシステム」となる。


もっとぶっちゃけると、Aの魔法陣は洞察力や決断力、発想力が決め手となるTRPGシステムだ。
これは面白い。 面白いんだけど難しいし、興味深い。


まとめ
前提1:「Aの魔法陣は非データ可動型のTRPGのシステムである」
前提2:「TRPGにはデータ依存部分とデータに依存しない部分がある」
結論 :「Aの魔法陣はデータ以外の部分に重点を置いたシステムである」


Aの魔法陣の面白さ】

ここからは雑談で、論理的な話ではないんで、あしからずご了承下さい。


Aの魔法陣は非データ可動型のシステムなので、当然、データに縛られる範囲がせまい。
これは、PCが取れる行動の幅もずっと広がるという事だ。


例えば、ある場所からブルーリボンを取ってくるという試験があり、その間には魔獣の軍勢が陣をひいて待ち構えているとする。


TRPGの熟練者であれば、こちらの戦力を計り、相手の戦力を分析し、策を練り手練手管を尽す。
でも、交渉で乗り切ろうとしたり、別の勝負でお茶を濁そうとするのも立派な作戦だし、極端な話、別の場所からブルーリボンを手に入れたり、偽物で代用したりする手段だってある訳だ。


これをD&D3eでするとGMは「俺が手間隙かけて用意した魔獣の軍勢のデータを無駄にすんな。だいたい交渉やブラフで解決して、冒険として楽しいのか!」というような返答をするだろう。 
これはむしろ当然の反応だ。
D&D3eは、魔獣の軍勢と戦うのが面白いシステムであり、交渉やブラフで一発解決するのは楽しくないシステムだからだ。


ところが、Aの魔法陣では、魔獣の軍勢と戦うのも、交渉やブラフで一発解決するも同じ判定で処理できるシステムであり同じように面白いシステムなのだ。
であれば、PLが思いついた交渉やブラフで一発解決の作戦を却下する理由などまるでなく、むしろこう言った手段を考える事こそ推奨されるのが分かってもらえるのではないだろうか。


Aの魔法陣の楽しさは、他のシステムより遥かに禁じ手の少ない自由さにあり、洞察力や決断力、発想力を限界まで振るえる開放感にあるのではないか、と思う。


まとめ
前提1:「TRPGのシステムには、特定の方向性(戦闘など)に特化した物もある」
前提2:「特定の方向性に特化したシステムは、その方向性を推奨し、それ以外を推奨しない」
結論 :「Aの魔法陣は特定の方向性を持たない為、方向性の面では自由度が高い」


Aの魔法陣の難しい所】

このように、Aの魔法陣は詐欺しめいた洞察力や決断力、発想力が自在に発揮できるシステムである。
ところが、洞察力や決断力、発想力での遊びには大きな障害があって、それを固定観念という。


この障害があるせいで、TRPGの熟練者がAの魔法陣で活躍できるとは限らず、TRPG初心者が活躍する事も珍しくない。
というか、むしろTRPGの熟練者の方が固定観念がある分動きがぎこちないように見える(私見)


これはTRPGの熟練者がデータに依存した遊び方に慣れ親しんでおり、無意識の内に固定観念に囚われている為だろう。
これは仕方が無い事で、ゴブリン退治を依頼される度に「産業革命を起こして村を貿易業に移行。代わりに森は放置してゴブリンと共存だ」とか発想力を発揮されては、ただの困ったちゃんと言われかねない。


でも、どんなセッションでも洞察力や決断力は基礎になるし、セッションで許される範囲で発想を広げるのは上手なプレイングと言えるだろう。
そういう意味で、洞察力や決断力を磨き、発想力を高める為にもAの魔法陣で遊ぶのはタメになると思う。


【ルール解説】

きちんとした解説は、サポートページや、参加者の1人がまとめてるここがわかりやすいかと思います(と宣伝