敗者の礼儀

TRPGのマスタリングテクニックについては、もう随分あちこちで紹介されている。
以前の日記にも書いたアリアンロッド上級ルールや、この前でたN◎VAのサプリ、
ストレイライトにも分かりやすい説明がされていた。
で、それを読むと私のような自己流でマスタリングしてきた人にも、「あるある」と
同意したり、「なるほどね」と新発見があったりするのだが、「あれ」と思う点も
無い訳ではない。
例えば、勝ち負けのテクニックについて重要な手があるのに書いてないな、とかね。


勝負で自分が勝って嬉しい時と、勝ったのに嬉しくない時はどんな時だろうか。
お互い全力で戦った後に、相手が潔く爽やかに負けを認めてくれた時は嬉しい。
「負けたよ」「あなたも強かったです」なんで胡散臭いスポーツマンちっくな
展開は青臭いし偽善の香りはするが、勝負の楽しさを磨き上げる。
「次は負けないからな!」「いつでも来い」ってな負け惜しみパターンも、
ありがちだけど、勝負の価値を上げてくれる良い展開だ。
(別にゴマをすったり嘘をつく事を推奨している訳ではない。
 自分の中のの相手を認めてる部分を選択して表現しているだけだ) 


逆に「あれはルール違反だった。本当は自分か勝ってた」と駄々をこねたり、
不貞腐れてヤケを起こしたりするのは、相手だけでなく自分や、その勝負自体の
価値を下げる望ましくない態度だ。


こうやってみると、スポーツの世界は流石に延々と勝負を繰り返して来ただけあって
勝負を価値のある形にする方法を良くおさえている。
これを礼儀と言い、勝者には勝者の、敗者には敗者の礼儀があると私は思う。


これは、TRPGの世界にも同じ事が言える。
「あそこので突撃してくるとは思わなかったな」とか「今度こそPCを2人は倒せる
筈だったんだけど」という賞賛と負け惜しみをGMがセッションの後で言う事によって、
PLは自分達の勝利をより価値のある物として認識できる。
私は、褒めたり悔しがるのもマスタリングのテクニックだと思う。
間違っても不機嫌になったり愚痴ったりしてはいけないのだ。
それはGM自身やセッションの価値をどぶに捨てるような言動だからね。


更にもう一歩踏み出すと、GMとしてはセッション前に行なうテクニックがある。
それはPLを脅して挑発する事だ。
「棺桶に叩っこんでやる!」と言っても良いし、ハットトリック予告をするように、
「今度の敵はめちゃ強いぞ」と言っても良いし、「3人は死ぬな」と予告しても良い。


上手いGMのセッションの戦闘は怖い。
実際の死亡率は兎も角として、その場には「いつ死んでも不思議じゃない」雰囲気がある。
それは勝負の価値を高める為には必要不可欠な物だ。


TRPGを行なう際にはこんな事を頭の隅に入れておくと楽しく遊べるんじゃないかな。