成功と失敗

最近のTRPGのルールブックにはマスタリングのテクニックが詳細に解説されている。
私の記憶の中でもD20システムクトゥルフアリアンロッドなどは特によく出来てる。
以前は「マスターがルールです」程度の事しか書かれていなかった事を思うと
今までは試行錯誤の繰り返しでしか見に付けられなかった技術が広く普及していくのは
少し怖い気もするが基本的には歓迎すべき事だろう。
(なんで怖いのかの理由は、またいつか述べよう)


ただ、どんな技術でもそうだが言葉にすると消えてしまう事はある。
せっかくなので、私はここでひとつそれを拾い上げてみようと思う。


ミッションの成功
マスタリングの解説には往々にして、セッションを成功させる為にミッションを成功させる
方法が書かれている。
最近のシナリオの傾向にもあるが、基本的にセッションはマスターが用意したミッションを
成功させる事が、もっともストーリーが盛り上がり、経験値やお金も入手できる。
だが、それは常に正しいだろうか。


TRPGは基本的に冒険を行う物で、冒険は基本的に成功するか否か分からない物だ。
だから、ミッションは失敗しても構わない。いやもっと失敗するべきだ。
私は、そういった考えもマスタリング技術だと思う。


ちなみに、セッションは失敗をしてはいけない。
困難を乗り越えて戦い、今一歩実力か運が足りずに敗れ去りミッションが失敗する事は
必要な事だが、それを「つまらなかった」「面白くなかった」と思わせてしまったなら
それはセッションの失敗であり、マスターとして避けねばならない事態だ。


マスターは公平であるべきであり、プレイヤーが不運か不注意でPC死ぬべき事態に
なったならPCを殺すべきであり、その結果PTが全滅してもためらうべきではない。
優れた行動を称し愚かな行為を罰する事は、ゲームを成立させる最低限のルール。
これが出来ないマスタリングは、緊張感を失って結果的にTRPGの楽しみを失う。


また、マスター側の思考として、あらゆる判定、あらゆる状況で成功する事が
最善である、という思考しかしてないのであれば、そこに再考の余地がある。
失敗する事がストーリーを面白くする事もあるし、失敗する事がモチベーションを
上げる場合もある。


これを考慮し判定に失敗した時にそれを利用するのもマスタリングのテクニックだ。
それは単純に失敗をネタに笑い話にするといった物だけでなく、より深みを増す
イベントの導入に使える時もある。
また、「判定を失敗する事に対する警戒感」を緩和する働きもあり、プレイングの
幅を広げる作用もある。


ちなみに、TRPGにはプレイヤーが意識的に判定などに失敗できるシステムもある。
これを利用してわざと失敗するのはプレイヤーのテクニックとして有効だ。


成功も失敗も、その意味を決定するのはあとの展開次第だというのは
憶えていて損の無いマスタリングのテクニックだと思う。


だから、もっと失敗をしよう。